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中小企業の“マーケットイン”と“プロダクトアウト”とは?

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はじめに
当社は、アナログメーター(電気計測器)部品の製造を原点とし、お客様の要求仕様に応じて部品を仕上げていく、いわゆるBtoBビジネスを中心に発展してきました。
こうした事業背景から、「お客様の声をよく聞き、その要望に応えることで価値を提供する」という文化が根付いており、当社のものづくりを支える重要な考え方となっています。また、当社の営業方針においても「お客様に喜んでいただける製品・サービスを提供する」という考えを根幹に据えています。
一方で、近年はデータロガーの「WATCH LOGGER」・アルコールチェッカーのような自社製品の開発にも取り組んでいます。これは従来の受託型ビジネスとは異なり、自ら市場に価値を提案していく領域であり、これまでとは異なる視点や考え方が求められます。
本記事では、その中で感じた「マーケットイン」と「プロダクトアウト」の考え方についてご紹介します。



マーケットインとプロダクトアウト
こうした文脈の中で重要になるのが、「マーケットイン」と「プロダクトアウト」という考え方です。マーケットインとは、市場や顧客のニーズを起点に製品やサービスを考えるアプローチであり、「お客様が何を求めているか」を出発点とします。一方、プロダクトアウトは、自社の技術やアイデアを起点に製品を開発し、「自分たちはこれを提供したい」という発想から市場に提案していくアプローチです。
どちらが正しいというものではなく、企業の特性や置かれている状況によって適した考え方は異なりますが、一般的に技術志向の強い企業ほど、プロダクトアウト的な発想に傾きやすい傾向があるように感じます。

それぞれの強みと難しさ
マーケットインは顧客の声をベースにするため、ニーズとのズレが少なく、比較的失敗のリスクを抑えやすいという特長があります。一方で、既存のニーズの延長線上にある製品になりやすく、大きな変化や新しさを生み出しにくいという側面もあります。
対してプロダクトアウトは、これまでにない価値を生み出す可能性を持つアプローチです。例えば、スティーブ・ジョブズが率いたAppleiPodiPhoneは、「こういう体験や世界を実現したい」という思想から出発し、結果として市場そのものを大きく変えるイノベーションとなりました。ただ一方で、こうした成功事例の裏側には、多くの試行錯誤や失敗も存在します。Appleにおいても、過去には「Newton(携帯情報端末)」や「Power Mac G4 Cube」といった製品が市場に受け入れられず、短期間で販売終了となった例があります。
このように、プロダクトアウトは大きな成功を生む可能性を持つ一方で、不確実性も高く、すべてが市場に受け入れられるわけではありません。新しい価値を提案するということは、それだけ多くの挑戦が必要になる側面もあると考えられます。

中小企業にとっての現実
ここで重要になるのが、企業規模による「打ち手の違い」です。
プロダクトアウト型の挑戦は、複数の試みを繰り返すことで成功確率を高めていく側面があります。しかし、そのためには資金、人材、時間といった経営資源が必要です。一般的にこれらは「ヒト・モノ・カネ」と表現されますが、こうした資源を潤沢に持つ大企業であれば、複数の挑戦を同時に進めることも可能です。Appleの事例はその典型と言えるでしょう。
一方で、中小企業においてはこれらの資源は限られており、すべての挑戦に同じように投資することは現実的ではありません。場合によっては、一度の失敗が事業に大きな影響を与えてしまう可能性もあります。そのため、一つ一つの取り組みにおいて、より確度の高い判断が求められます。

 
当社の取り組み ― 展示会を通じたマーケットイン
このような背景から、当社としては、リスクを抑えながら限られた経営資源の中で事業を進めるという観点において、中小企業にはマーケットイン的な考え方が有効な場面が多いのではないかと感じています。
その一例として、アルコールチェッカーの製品開発があります。従来製品では、測定結果を紙に記入する手間がかかる一方で、Bluetoothタイプは価格や運用面でハードルが高いというご意見を、日々の営業活動やお客様との対話の中で複数いただいていました。こうした声を踏まえ、当社では測定結果を本体に保存し、USB接続でCSVExcelデータ)として出力できる、シンプルで実用性の高い製品(FA-900U)を開発しました。これは、お客様の現場での使い勝手を重視した、マーケットインの考え方に基づく取り組みの一つです。
また、展示会の活用も重要な取り組みの一つです。当社は昨年、約10年ぶりに展示会へ出展し、そこで新製品であるBluetoothデータロガーを発表しました。展示会では、多くのお客様と直接対話する中で、当初想定していなかった用途や改善要望について、複数の方から共通したご意見をいただきました。こうした「現場の声」は、机上では得られない非常に価値の高い情報です。
現在は、これらのフィードバックをもとにデータロガーの新製品開発を進めており、この春の市場投入に向けて準備を進めています。こうした一連の動きも、マーケットインの考え方に基づく取り組みと言えるでしょう。


まとめ

マーケットインとプロダクトアウトは、いずれもものづくりにおいて重要な考え方であり、どちらか一方が優れているというものではありません。
ただし、限られた経営資源の中で事業を進めていく中小企業にとっては、市場や顧客の声に基づき、確度の高い製品開発を進めていくことが現実的な選択となる場面が多いのではないかと考えています。その上で、日々の取り組みの中で得られた知見や技術を積み重ねていくことで、将来的にはより付加価値の高い提案や新たな価値創出につなげていくことも可能になるのではないでしょうか。
当社としても、これまで培ってきた「お客様に寄り添うものづくり」の姿勢を大切にしながら、今後も市場に価値を提供し続けていきたいと考えています。

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